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選択科目「不動産と金融」Vol.3(2020/5/21)

前回の振り返り

既存の商業不動産投資の異なる方式。①Core:低リスク、既存のビジネスが主な収入源②Core Plus:正常の運営している中で、既存の収入を増やす取り組み③Value-Add:厳しい経営の中で、様々な手を打って、収入を増やす取り組み

新常态における不動産業界の新たな方向性

  • 方向①自動車普及を前提にした巨大ショッピングモール。事例:American Dream。中国での事例:乐多港、正佳广场(太古汇)などあるが、業績は芳しくない。周辺に競合となる施設が多い。
  • 方向②旅行地不動産。事例紹介:上海から新幹線で約2時間半の千島湖。新幹線の駅があり、立地がとても良い。
  • 方向③老人ホーム不動産。 上海が推奨する老人ケアの推奨9073。90%は、家庭、7%は住宅エリアからの介護サービス、3%は、老人ホーム。泰康は、9073の73に特化した高級サービスを展開。日本の松下も進出。ただし赤字。利幅が小さい中で、今後、どのように産業として大きくしていくが課題。
  • 方向④教育関連不動産。事例:ニューヨークのJFK High School Bellmore NYや北京の昌平二中など。高い税金でも、皆好んで、レベルの高い学校エリアに居住する。
  • 方向⑤高年齢化における地方都市再生。事例:日本の神山町や空き家を活用して、10年後に家賃を全額返還する地方再生プラン。
  • 方向⑥一般的な都市再生プラン。事例:JDの翠宫饭店買収など。
徳島神山町の地方再生

不動産財務評価方法

  • BOE分析(Back-Of-the-Envelope)。William J.Poorvuが開発した不動産評価手法。William J.Poorvuは、自ら不動産開発・不動産投資を手掛ける実務家として、過去30年間にわたりハーバード・ビジネススクールで「不動産投資」のクラスを担当。
  • BOE分析は、資産収益を考慮せず。キャッシュフローからくる投資収益を重要視する。
  • 保有収益>保有コストのときに購入する、という考え。
  • 保有収益:不動産がもたらす直接収益と間接収益。
  • 保有コスト:直接コストと機会コスト。
  • Q)93㎡12,000万元、家賃収入15万元/年、ローン金利6%、他金融商品利率4%50%は初回に払い、のこり50%はローンで購入するとき、買うべきかどうか?
  • 収益:家賃収入15万元+不動産価格上昇分36万元(12,000万元×3%)+学区上昇分10万元=61万元
  • コスト:ローン金利分36万元(600万元×6%)+機会コスト24万元(600万元×4%)=60万元
  • ゆえに、1万元+なので、投資すべき。
  • ROAは、債務を増やして、自己資本比率を下げれば、上がる。
  • 中国不動産大手の恒大は、2017年まで7年レイン族でキャッシュフローがマイナス。しかし、株価は4倍に上昇。土地を購入し、かつ債務を返済していた。また特に2016-2017年頃は土地の価格が上昇。ゆえにキャッシュフローとは関係のない要因で株価が上がっていた。
  • 不動産会社の債務返済能力を確認する指標として、現金預金比率がある。现金资产/流动负债。
  • 現金預金比率でみると、中国の不動産は楽観視できない。

政府の介入

  • ①市場が機能不全に陥った時②再分配が必要な時に、不動産市場に政府が介入する場合がある。
  • 再分配は公平な制度であるが、では何をもって公平というのか?ジョン・ロールズの無知のベール。
  • 政府の介入政策。アメリカでは、1937年の賃貸不動産を促進させる政策を実施。
  • 中国では、賃貸市場が大きくない。また、中国では、建設用の土地制限、土地の用途制限などがある。なぜ、中国では、賃貸不動産供給が少ないのか?長期賃貸の利率は1%にも満たなく、企業の利益がほとんどないためである。

選択科目「不動産と金融」Vol.2(2020/5/14)

労働節明けの2回目の授業。

<前回のまとめ>

  1. 高い住宅価格を支える要因;高い収入増加と人口流入の予測、金融市場の低金利、限られた住宅供給
  2. 住宅価格上昇の要因;収入増加と人口増加の予測、投資可能な財の増加、住宅需要と供給の不一致
  3. 黄金の10年(2003-2013年);安価な住宅価格から開始、基本よそくと低金利が住宅価格に対応。住宅価格上昇に伴い、投資可能な財のさならる増加、住宅価格上昇の減速。
  4. 第二の相場(2015-2018年);実体経済のROE低下、企業家の投資が不動産市場へ、一二級都市の住宅価格の2回目の上昇。購入制限政策(限购政策)などの要因により、三四級都市の住宅価格も上昇。住宅価格上昇により、上昇を原則させる方向へ。

<今回の授業>

  • 2015-2018年における住宅価格および限购の外部への影響をみると、住宅価格上昇地区の周辺都市も同様に上昇するが、賃貸価格には影響を与えない。

COVID-19の影響

  • COVID-19の影響は?アメリカでは、新たな売り出される住宅量は大幅に減少しているが、4月下旬において、わずか4%の中古住宅価格が下落したのみ。CARES法案によるローンの一時支払い期限延長などもあり、アメリカ不動産市場に大きな影響を与えていない。
  • COVID-19の住宅需要に対しての影響は、2つある(教授の考え)。一つは、改善型需求。家で過ごさないといけないため、特に子供がいる家庭は、より大きな住宅への要求が高まる。2つ目は、父母陪伴需求。老人は抵抗力がないため、老人ホームではなく、自分たちで暮らせる住宅が必要と思う人が多くなるのでは。
  • COVID-19により、企業の貸出金利が下がったため、その資金を利用して、不動産市場へ投資する企業が深圳で増えたという噂が出た。しかし、調査の結果、そのような行動はなかったとのこと。また、深圳は、普通住宅(144平方メートル)の増値税を2年間徴収しない政策をとっている。すると、144平方メートル以下の住宅価格が上昇するが、その上昇に伴い、144平方メートル以上の住宅も影響を受けて上昇するという現象が現れている。

住宅価格とエリアの関係

  • 单中心区位理论:中心地からの距離が価格を決める。
  • 生活コスト=家賃+通勤コスト
  • Hommer Hoyet扇形理論(Secotr Model)。CBDを中心に扇形状に都市が発展していくという理論(下記図参照)。
  • 不動産投資において、エリアは考慮すべき事項であるのか?都市の環境が改善されれば、賃貸価格も上昇、通勤コストは変わらないので、エリアは投資に影響を与える。一方で、エリアの賃金上昇に伴い、賃貸も上昇、しかし、通勤コストもエリア人口増加などにより快適さが下がることにより上昇、ゆえにエリアは投資に影響を与えない。
  • 都市計画(杭州西溪、中关村など)、商業施設なども影響を与える。
  • ZIPR法則、都市の分布は、人口が集中する少数の大きな都市と、数多くのより小さな都市に分かれる。上位になればなるほどランク間に大きな差がつくようになり、それは一定の規則性に従っている。ただし、中国は、アメリカに比べて、この法則に合わない。そればなぜか?人口流動限制、特定都市の人口規模制限、都市間の競争などが理由である。
  • 都市集中理論;人、産業、物があつまることが最も重要。
  • では、国は大都市の建設を目指していくべきなのか?地下鉄など、規模の経済が働くため、大都市が良いという考えもある一方で、逆の考えもある。
  • 中国の将来の変化は?人口規制をやめるのか?継続するのか?大湾区&长三角&京津冀の堺が消えつつある。溢出效应(Spillover Effect)なのか?それとも虹吸效应(Siphon Effect)や马太效应(Matthew Effect)なのか?Spillover Effectとは、大都市で発展した産業やサービスが周辺都市に流れ込み、周辺都市も同時に発展すること。一方、Siphon Effectとは、大都市の周辺都市が、大都市のために産業やサービスを発展させ、次第にその基盤が周辺都市から大都市に移動し、周辺都市は、大都市を超える都市には発展できないというもの。いずれにせよ、大都市の周辺都市は、優位性を獲得していかねばならない。
  • 上海の周辺都市である昆山は、安価な生産コスト及び流通管理コストを武器に、PCの部品生産に特化した。
  • 不動産価格上昇の土地を予測するのは難しい、ゆえに複数都市に投資を分散させるのが良い。そこで、REITSの登場。
  • エリアとビジネス地区および新地区。中国のショッピングセンターは、拼多多現象が起きている、つまり1、2級都市と3、4級都市では入居店舗が異なる。
  • 新常態の中での不動産業界の方向性。①車社会によるショッピングモール中心②旅行エリア③教育エリア④老人エリア⑤高齢化での都市更新⑥一般の意味での都市更新
  • 事例、マスター・ビルダーと呼ばれ、ニューヨークの都市計画を推進したRobert Moses

Hommer Hoyet扇形理論

選択科目「不動産と金融」Vol.1(2020/4/30)

张宇助理教授担当による全8回の授業。2011年に清華大学、2017年にプリンストン大学を卒業した若い先生です。

不動産、金融と私の専門領域ではないですが、中国不動産バブルは弾ける弾けると十数年ずっと言われ続けていますが、まだ弾けていません。そのあたりの、中国不動産バブルの状況をすこしでも理解できたらなと思います。

1.イントロ

1.1中国不動産市場の歴史と沿革

住宅市場は、改革前の①1947~1978年と改革後の②1978~2003年③2003年~の大きく3つの期間に分かれる。

改革前の①1947~1978年は、住房公有&福利分配で国による配給方式、そして所有権、処置権、補修責任はすべて政府に帰属していた。

改革後の②1978~2003年は、1998年の23号事案により、実物配布が停止され、価格に基づき、需要と供給による経済原理を活用した制度へ移行。また、2003年の18号事案により、さならる市場志向へ。

中国GDP全体に占める不動産業界の直接貢献は、13%(2012年)。

2019年の中国トップ500企業の中に、52社の不動産企業が含まれる。恒大5,782憶元、碧桂园5,478憶元。中国サッカー16チームのうち、半数以上が不動産企業に保有されている。一方、アメリカでは、もっとも大きな不動産会社がD.R.Horton1,241憶元で、規模は小さい。

1.2中国不動産市場と海外の比較

持ち家率

中国は、持ち家比率(自有率)が87%と高い。アメリカは、665、日本は61%。さらに教授の研究結果によると、中国の都市生活者のうち、15%は賃貸、70%は持ち家、15%は複数の持ち家。

都市部での不動産税

中国の都市部では、不動産税がない。ただし、上海、重慶はあり。また、70年の土地使用権は、自動更新。更新時の費用は、2-3%の実績があり。ただし、今後、どうなるか不明。北京で不動産税がないのであれば、不動産価格が割高かもしれないが、アメリカで毎年1.5%取られるのであれば、実は北京不動産の方が得かもしれない。

中央政府の介入

2.住宅市場の需要と供給

2-1.住宅価格の決定要因

需要要因;収入、人口、婚姻市場、投資需要、信用貸出

供給要因;不足?過剰?アンバランス?

供給過剰の事例;鄂尔多斯の住宅価格が2年で35%下落。

★宿題:不動産価格サイトで、好きな住宅エリアを選び、全国平均の変動と比較分析を行う。また、その他、気づきをまとめる。